次の瞬間、坂本加奈は彼に引っ張り出された。
男は「……」
ステージの上で、林波留は地面に伏せ、涙をポロポロと流しながら、観客からの催促の声に、固く結んでいた唇を開き、すすり泣くような声を出した。「ワン……ワン……ワンワン……」
佐藤薫は彼女が犬の鳴き真似をするのを聞いて、溜飲が下がる思いだった。ちょうど坂本加奈に話しかけようとして、「あれ?加奈ちゃんは?」
目を凝らして辺りを探しても見当たらなかった。
「探さなくていいよ、とっくに連れて行かれたから」薄田正は彼女が坂本加奈と一緒に来たことを知っていたので、自然に話しかけた。
佐藤薫は「ああ」と言って、また舞台を見ながら、意地悪く言った。「自業自得ね、まさにざまあみろ!」
薄田正はその言葉を聞いて、目を向けながら、皮肉っぽく笑って言った。「あの子は天然で無害そうなのに、どうしてこんな友達と付き合ってるんだろう!」
「私がどうかしたの?」佐藤薫は彼を横目で見た。
薄田正は少し考えて、「辛い唐辛子みたいな性格で、彼女とは正反対だね」
「これを相性が良いっていうのよ!」佐藤薫は腕を組んで、「あの子はあんなに優しい子だから、強気な友達が守ってあげないとね」
薄田正は彼女の自信に満ちた表情を見つめ、まるで別の人を見ているかのようだった。
あの女もこんな感じだった……
くそっ、またあの薄情な小悪魔のことを思い出してしまった!!
……
坂本加奈は戻ってきた黒川浩二にバーから引っ張り出され、まだ言葉を言い終わらないうちに、男は体を回転させて彼女を路地に引き込んだ。
頭を下げて彼女の赤い唇にキスをした。それは少し苛立ちを含んだものだった。
「痛い、痛い……」
彼のキスは優しいものではなく、噛みつくようなものだった。
まるで獲物を咀嚼する捕食者のように、支配的で残酷だった。
坂本加奈はキスがこんなものだとは知らなかった。涙目になって、表情が次第に悲しげになった。
黒川浩二はゆっくりと止め、深いため息をつき、彼女の唇に視線を落とした。一瞬の心痛があったが、それ以上に所有欲が支配していた。
「次は踊るなって言ったよな」あんなに多くの男たちの前で踊って、俺を狂わせたいのか?