第155章:食事前のご褒美

「私たち、あの時すでに終わっていたはず」林翔平の表情は穏やかだったが、一言一言が優しくも残酷だった。

白川晴香はその場に凍りついたまま、瞳孔が開いていき、信じられない様子だった。

「でも、でもあなたは私のことを気にかけているはず。私のために結婚式まで放棄したじゃない……」

彼女は呟いた。まるで彼を説得しているようで、むしろ自分自身を説得しているようだった。

林翔平の表情は変わらなかった。「あなたが海外で困っているときに私を頼ってきたのだから、見過ごすわけにはいかなかった。それに当時の別れは私が悪かったから、人情としても道理としても、あなたに償わなければならなかった」

白川晴香の目から涙が溢れ出し、声を詰まらせながら言った。「つまり、あなたは私への償いのためだけに……」

ただの罪悪感からだったの?

「加奈はいつも素直で従順だった。私の気持ちを分かってくれると思っていた」林翔平は唇を噛み、声には諦めと少しの後悔が混ざっていた。

彼は加奈が本当に自分と別れ、さらに他の男と結婚するとは思っていなかった。

もし知っていたら、結婚式で彼女を置き去りにすることは絶対になかっただろう。

「でも彼女は今、結婚してしまった」白川晴香は諦めきれない様子で言った。「もうあなたのことを望んでいない……」

林翔平の心は沈み、声も冷たくなった。「分かっている」

「翔平、もし彼女がいなかったら、私たち今頃子供がいたかもしれないのよ」白川晴香は涙を流しながら、最後の希望を抱いて尋ねた。「まさか本当に……彼女を愛してしまったの?」

彼は坂本加奈を憎むべきじゃないの?どうして愛してしまえるの?

そんなの許せない!!

林翔平は彼女の質問に答えず、曖昧に言った。「春子、人は変わるものだ。この数年で君も変わった、私も変わった」

白川晴香は頭を殴られたかのように、一歩後ずさり、その細い体は嵐の中で揺れるバラのように震え、いつ折れてしまいそうだった。

林翔平は彼女のその様子を見て、心に罪悪感が込み上げてきたが、結局それ以上は何も言わず、大股で立ち去った。

坂本加奈を追いかけることを急いでいた。

……

坂本加奈が展示会場を出たところで、背後から林翔平の声が聞こえた。

「加奈……坂本加奈」