「留学なんて考えたことないけど、画家になりたいの。コンテストに参加すれば、もっと多くの人に私の絵を見てもらえるから、参加することにしたの」
彼女の夢はモネやゴッホのような偉大な画家になることだった。でも、自分にできるかどうかわからない。限界を設けず、一歩一歩着実に進んでいくことにした。
黒川浩二は扇のように濃い睫毛を伏せ、何も言わなかった。
「私が画家になれないと思ってるの?」坂本加奈は黒川詩織の言葉を思い出し、恋愛関係だから自分を傷つける言葉を言わないだけなのではないかと考えてしまった。
「そんなことない」黒川浩二は瞼を上げ、熱い眼差しで断言した。「むしろ、君は必ず素晴らしい画家になれると信じている」
坂本加奈は思わず尋ねた。「どうして?前に詩織さんに夢と妄想は違うって言ってたじゃない?」