第195章：心配

墨都が三伏天に入る頃、坂本加奈も夏休みを迎えようとしていた。

しかし、夏休み前にはまだ試験があり、彼女は黒川浩二からの誘いを含むすべての誘いを断り、絵を描くことと試験の準備に専念していた。

黒川浩二は毎日仕事から帰っても、食卓で彼女を見かけることができるのは夕食の時だけだった。

夕食を済ませると、彼女は食器を置いてアトリエに戻り、創作に没頭した。

深夜になってようやく自室に戻るのだった。

黒川浩二は何度か暗示を与えようとしたが、彼女の疲れ切った様子を見ると、口まで出かかった言葉を飲み込んでしまうのだった。

「童貞」の帽子を脱いだばかりなのに、もう修行僧のような生活を送ることになるとは、経験者にしかわからない苦労だった。

試験前日の朝、坂本加奈と黒川浩二は食卓で朝食を取っていた。