第196章:嫉妬

学校への道で、坂本加奈は彼女の話を最後まで聞いたが、すぐには承諾せず、躊躇いながら言った。「それって本当にいいの?」

「会社は浩二が経営しているのよ。私たちは何もわからないのに、勝手に誰かを重用してもらうなんて、無理な要求みたいじゃない?」

「加奈、どうしてあなたまでお兄さんの味方するの?」

黒川詩織はすぐに焦り始めた。「お兄さんは森口花のことを知らないけど、あなたは分かるでしょう?彼は性格が良くて、一生懸命頑張る人なの。本当にいい人よ」

「本当にいい人なら、なぜあなたが浩二にお願いしなきゃいけないの?」坂本加奈は眉をひそめ、疑問を投げかけた。「これって裏口入学みたいなものでしょう!」

本当に実力のある人なら、裏口入学なんて軽蔑するはずじゃない?

「彼は私がお兄さんにお願いに来たことなんて全然知らないの」黒川詩織は口を尖らせ、指を見つめながら言った。「私は彼が会社に入って圧迫されるのを見たくないだけ。大企業ほど競争が激しくて、新人が頭角を現すのは難しいってことを知らないでしょう」

彼が出世できなければ、恋愛する余裕なんてないはず。

坂本加奈は理解した。彼女は森口花に内緒で、こっそりとこういうことをしているのだと。

「詩織、あなたが彼のためにこんなことをしているのに彼は知らないのよ。もし将来、彼があなたと一緒にならなかったら...」

「そんなことありえない!」黒川詩織は確信に満ちた口調で言った。「私たち絶対に一緒になるわ。私が卒業したら会社に入るから、そうしたら毎日一緒にいられるの」

杏色の瞳には期待が満ち溢れ、まるで二人の幸せな未来を思い描いているかのようだった。

坂本加奈は彼女の期待に満ちた表情を見て、完全に恋に溺れた少女で、理性など微塵もないことを悟った。

彼女の幻想を壊すのが忍びなく、折れて言った。「浩二に話してみることはできるけど、成功は保証できないわ!」

「ありがとう、加奈!」黒川詩織は嬉しそうに彼女を抱きしめ、頬にキスをした。「やっぱりあなたが一番いいわ!お兄さんにあなたが言えば、きっと承諾してくれるわ」

坂本加奈:「...」

そこまで私に自信を持たなくてもいいのに!

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