第208話:離して

上野美里が最初に知らせを受けて駆けつけた。今や涙でぐしゃぐしゃになっていた。

坂本加奈は、ここまで抑えてきた感情が決壊しそうになり、上野美里を抱きしめた。その細い姿は今や強い意志を感じさせ、「大丈夫よ、おばあさまはきっと大丈夫。お母さん、泣かないで」と慰めた。

上野美里は涙を拭いながら、うなずいた。

坂本加奈は手術室の閉ざされたドアを見上げ、紅い唇をきつく結び、目を瞬きすることさえ恐れていた。

どれくらい待ったかわからないうちに、手術室のドアが突然開いた……

医師が出てきて、家族が尋ねる前に首を振り、重い口調で「申し訳ありません。私たちは最善を尽くしましたが……」と言った。

上野美里は再び声を上げて泣き出した。

坂本加奈は魂の抜けた木のように、その場に立ち尽くし、目は赤く腫れていたが、涙は出なかった。

上野美里は彼女があまりに悲しみすぎているのを心配し、すすり泣きながら「加奈、そんな風にしないで……泣きたいなら泣いていいのよ……」と言った。

坂本加奈の散漫だった瞳が徐々に焦点を結び、医師を見上げて、かすれた声で「私……おばあさまに会ってもいいですか?」と尋ねた。

医師は軽くうなずいた。

坂本加奈は看護師について手術室に入った。坂本おばあさまは手術台の上で安らかに横たわっており、無影灯はまだ消えておらず、その光が顔に当たり、すべての皺を鮮明に照らし出していた。

体には白い布が掛けられ、空気中には消毒液と血の混ざった匂いが漂っていた。

奇妙なことに、彼女はその匂いを嫌とは思わなかった。

それはおばあさまの血の匂いだった。

坂本加奈は手術台の傍らに歩み寄り、指先で白髪に優しく触れ、蒼白い小さな顔に微笑みが浮かんだ。

「おばあさま……」

声を出すと、止めどなく震えた。

「長年お疲れさまでした」彼女は安らかな表情のおばあさまを見下ろしながら、柳の綿毛のように柔らかな声で言った。「私のことは心配しないでください。これからは私、しっかり生きていきます。毎日希望を持って生きていきますから、あちらでもお元気で、私のことを心配しすぎないでください」

上野美里も後に続いて入ってきて、彼女の言葉を聞き、さらに激しく涙を流し、声を詰まらせた。