第208話:離して

上野美里が最初に知らせを受けて駆けつけた。今や涙でぐしゃぐしゃになっていた。

坂本加奈は、ここまで抑えてきた感情が決壊しそうになり、上野美里を抱きしめた。その細い姿は今や強い意志を感じさせ、「大丈夫よ、おばあさまはきっと大丈夫。お母さん、泣かないで」と慰めた。

上野美里は涙を拭いながら、うなずいた。

坂本加奈は手術室の閉ざされたドアを見上げ、紅い唇をきつく結び、目を瞬きすることさえ恐れていた。

どれくらい待ったかわからないうちに、手術室のドアが突然開いた……

医師が出てきて、家族が尋ねる前に首を振り、重い口調で「申し訳ありません。私たちは最善を尽くしましたが……」と言った。

上野美里は再び声を上げて泣き出した。

坂本加奈は魂の抜けた木のように、その場に立ち尽くし、目は赤く腫れていたが、涙は出なかった。