第207話:お祖母さん

黒川浩二と坂本加奈には完璧なアリバイがあった。玄関の監視カメラ映像と家政婦の証言があったのだ。

警察は彼らへの疑いをすぐに晴らした。

バーと周辺の監視カメラは昨夜故障していて、バーテンダーに尋ねても覚えていないと言う。毎日多くの客が来るバーで、一人一人を覚えているわけにはいかないと。

この事件は瞬く間に未解決事件となり、解決の見込みがなくなった。

坂本加奈は上野美里から電話を受け、彼女と林翔平が暴行を受けたことについて心配していた。林翔平は今回ひどい目に遭った。

肋骨を二本折られ、顔も傷つけられ、これからは見た目も悪くなるだろう。

坂本加奈は上野美里に安心するよう慰め、この件は彼らとは無関係だと。林翔平がどうなろうと、自分には関係ないと。

電話で上野美里は思わず感慨深げに言った。「人は悪いことをしてはいけないものね。ほら、報いが来たでしょう」