第221章:罰する

坂本加奈は黒川詩織の答えを聞かなくても、表情を見るだけで彼女が森口花をどれほど好きなのかわかった。

でも浩二は絶対に認めないだろう。

兄妹はきっとこのことでまた喧嘩することになる。森口花にまさかこんな美人の悲劇を引き起こす素質があったとは。

「スイカを取りに行くわ」黒川詩織はキッチンへ走って行き、しばらくすると泣きそうな顔で戻ってきた。「どうしてこの冷蔵庫にはリンゴばかりなの?しかも色んな種類のリンゴばかり。スイカはどこ?スイカのない冷蔵庫なんて冷蔵庫じゃないわ!」

坂本加奈が顔を上げて彼女を見ると、執事が答えた。「あれは全て旦那様が用意するようにと指示されたものです。全て輸入品のリンゴで、とても高価なものです」

黒川詩織はリンゴが嫌いで、どんなに高価でも彼女の目には一文の価値もなかった。「リンゴなんて食べたくないわ。スイカが食べたい、冷やしたスイカよ!夏にスイカを食べないなんて、夏じゃないわ」

執事は笑って、「はいはい、すぐに買いに行かせましょう」

坂本加奈は目の前のテーブルに目を向けた。フルーツ皿にもリンゴが並んでいた。

そういえば、最近家にリンゴが増えていた。

キッチンにも、ダイニングにも、リビングにも、寝室やアトリエにまでもあった。

……

月が明るく星が疎らな、静かな夜に時折虫の鳴き声が響き、夏の雰囲気が満ちていた。

薄暗い部屋で、坂本加奈は突然目を開けて起き上がった。澄んだ瞳は虚ろで、焦点が合っていなかった。

彼女が起き上がった瞬間、黒川浩二も目を覚まし、彼女の呆然とした様子を見て既に慣れた様子だった。

坂本加奈は布団をめくってベッドから降り、スリッパも履かずにドアの方へ向かった。

黒川浩二はベッドサイドテーブルに置かれたリンゴを見て、眉をしかめながら諦めたような表情を浮かべた。

今夜もベッドサイドのリンゴを食べようとしなかった。

実は、この数日間、坂本加奈は依然として夢遊病の習慣があり、毎回起きてはリンゴを食べていた。

ただし、時にはベッドサイドのリンゴを食べて直ぐに横になって眠り続けることもあれば、幽霊のように家の中を歩き回ってリンゴを手に入れて食べてから戻って寝ることもあった。