坂本加奈は黒川詩織の答えを聞かなくても、表情を見るだけで彼女が森口花をどれほど好きなのかわかった。
でも浩二は絶対に認めないだろう。
兄妹はきっとこのことでまた喧嘩することになる。森口花にまさかこんな美人の悲劇を引き起こす素質があったとは。
「スイカを取りに行くわ」黒川詩織はキッチンへ走って行き、しばらくすると泣きそうな顔で戻ってきた。「どうしてこの冷蔵庫にはリンゴばかりなの?しかも色んな種類のリンゴばかり。スイカはどこ?スイカのない冷蔵庫なんて冷蔵庫じゃないわ!」
坂本加奈が顔を上げて彼女を見ると、執事が答えた。「あれは全て旦那様が用意するようにと指示されたものです。全て輸入品のリンゴで、とても高価なものです」
黒川詩織はリンゴが嫌いで、どんなに高価でも彼女の目には一文の価値もなかった。「リンゴなんて食べたくないわ。スイカが食べたい、冷やしたスイカよ!夏にスイカを食べないなんて、夏じゃないわ」