第232章:墨都の小さな嫉妬王様がまた出現した

黒川浩二は驚いて、「焼き肉?突然だね。キッチンでは準備が間に合わないだろう」

「外で食べましょう」坂本加奈は焼き肉を思い浮かべただけで元気が出てきて、腰も足も疲れを忘れた。「焼き肉屋に行きたい。それに冷えたビールも飲みたい」

「お酒も飲むの?」黒川浩二は眉をひそめた。

坂本加奈の可愛らしい顔がすぐに曇った。「冷えたビールを飲んでなにが悪いの?あなたは満足したら、もう私のことなんてどうでもいいってこと?男って、みんな最低...」

黒川浩二は諦めたように眉間にしわを寄せ、指先で彼女の頬をつついた。「何を言い出すんだ?連れて行かないなんて言ってないだろう!」

坂本加奈の目が一瞬で輝いた。「行こう行こう、早く行きましょう」

そう言うと、興奮してベッドから降り、クローゼットから服を選び始めた。

黒川浩二は横目で彼女の嬉しそうな様子を見て、胸がいっぱいになった。さっきのオーガズムよりも満たされた気分だった。

...

焼き肉屋は坂本加奈が指定した店で、以前よく坂本真理子や蘭と一緒に来ていた場所だった。

ただ、二人が焼き肉を食べてビールを飲んでいる時、彼女にはコーンジュースしか飲ませてもらえなかった。

今日はついに焼き肉を食べながら冷えたビールが飲める。まるで子供が長年の願いを叶えたみたいに、嬉しくて手足を動かして踊りだした。

道中ずっと機嫌よく小さな歌を口ずさんでいた。

夏は焼き肉屋が一番忙しい時期で、彼らが来た時間はちょうど食事時だったため、店内の席は既に満席だった。

外には空いているテーブルが二つあった。

店主は坂本加奈を知っていたが、彼女の隣にいる黒川浩二は初めて来店した客で、その身なりから普通の人ではないと見て取り、気を利かせて言った。「外に座りたくないなら、少し待っていただければ個室が空きますよ。あるいは近くを散歩されてもいいですし」

ここは飲食店が立ち並ぶ通りで、店舗だけでなく多くの屋台も出ており、夜は特に賑わっていて、庶民的な雰囲気に満ちていた。

坂本加奈は背の高い男性を見上げ、その目は「外でもいい?」と尋ねているようだった。

彼女と食事に来たため、黒川浩二はスーツではなく白いTシャツとグレーのパンツを着ていた。普段の冷たく禁欲的な雰囲気は消え、庶民的な空気の中にいることで、その雰囲気も温かみを帯びていた。