黒川浩二が焼き肉屋に戻ったとき、坂本加奈と佐藤薫はすでに食事を済ませ、隣のドリンクショップでアイスクリームと巨峰を買っていた。
ガラス窓の前に座り、おしゃべりをしながら食べていた。
坂本加奈は外の人々を見つめていた。誰もが笑顔を浮かべているが、誰の心の中にも傷を抱えているのだろうと。
突然、ほのかな灯りの中から見覚えのある姿が現れた。颯爽として、端正な容姿の持ち主だった。
明るい瞳に光が宿り、口角が思わず上がっていく。
佐藤薫は話しているうちに坂本加奈の声が聞こえなくなったことに気づき、横を向いて彼女を見た。春風のような笑みを浮かべている彼女の視線の先を追った。
黒川浩二がドアを開けて入ってきた。
坂本加奈は喜びを抑えきれず、舞い踊る蝶のように彼の胸に飛び込んだ。