第252章:当事者は気付かない

坂本加奈は安藤美緒のことを佐藤薫に伝えようと思っていたが、彼女は休暇を取って学校に来ていなかった。

電話にも出ず、ただLINEで「最近一人で静かに過ごしたい」というメッセージを返しただけだった。

その後のメッセージには返信がなかった。

どうやら今回は本当に兄の拒絶に傷ついたようだ!

夏の終わり、墨都では数日間雨が降り続き、しとしとと降る雨は、気分の優れない人の心にさらに暗い影を落とした。

佐藤薫は数日間自宅に引きこもり、使用人も追い払い、家には食べるものが何も残っていなかった。

気分は落ち込んだまま、化粧する気力もなく、髪も洗わず、服を着替えて黒い野球帽を被っただけで外出した。

南部には老舗のパン屋があり、焼きたてのパンが美味しいことで知られていた。彼女は直接車で買いに行った。