第261章:二人の世界

「坂本加奈、一緒に食事に行きましょう」

周りを通り過ぎる学生たちは思わず見入っていた。横断幕を見て笑い出す者もいれば、ひそひそと話し合う者も。女子学生たちは西村雄一郎に夢中な眼差しを向けて「あの男子、すごくかっこいい。うちの学校の人?」と言っていた。

坂本加奈の頬が一瞬で真っ赤になり、足早に駆け下りて怒りを込めて問いただした。「西村雄一郎、何をするつもり?」

西村雄一郎は大木に寄りかかり、指先にタバコを挟んで煙を吐きながら「言ったでしょう、食事に誘うって」

「私も答えたわ、行かないって」坂本加奈は横断幕を見てさらに怒りを募らせた。「早くそれを片付けさせて」

彼は恥ずかしくないのかもしれないけど、私は恥ずかしい。

「いいよ、君が食事に付き合ってくれれば」西村雄一郎は単刀直入に言った。