「冬休みに描くって言ったでしょう」坂本加奈は答え、少し間を置いて尋ねた。「どんなスタイルがいい?人物?風景?」
「自画像」西村雄一郎は躊躇なく答えた。「君の自画像」
「私の自画像って何に使うの?」
西村雄一郎は鼻先を触って心虚を隠し、「僕の絵は下手だから、君の絵を見て勉強したいんだけど、ダメ?」
「でも私の自画像も下手よ」
「なんでそんなにグダグダ言うんだ?」西村雄一郎はイライラして、「描けばいいだろう」
「はい」坂本加奈は頷いて、自分の絵を描き続けた。
西村雄一郎は彼女ともっと話したかったが、絵を描くのを邪魔して嫌がられ、追い出されるのが怖かった。
結局、自分が絵を描くときも、誰かがそばでぺちゃくちゃ喋るのが一番嫌いだから。
机の上には意見ノートとインクペンが置いてあった。