黒川浩二は背筋をピンと伸ばして立ち、胸の中で強い感情が渦巻いていた。心の底から暖かい流れが全身に広がっていった。
うつむいて、薄情な唇が思わず上がっていた。
坂本真理子は彼の口元の笑みを見て、不機嫌そうに言った。「何笑ってんだよ。俺の前でそんな得意げな顔するなよ。」
黒川浩二は口角の弧を収めて、淡々と言った。「行こう。」
「え?」
「スカッシュをしに。」
坂本真理子は一瞬固まった後、その意味を理解すると、すぐに立ち上がって勢いよく言った。「よし来い!社会主義万歳!非道な資本家を倒せ!」
***
窓の外では夕陽が沈みかけ、月見荘の中は平和な雰囲気に包まれていた。
中谷仁は中谷陸人の手を引いて入ってきたが、中谷陸人はすぐに彼の手を振り払い、坂本加奈の胸に飛び込んだ。
「ママ、会いたかったよ。」中谷陸人は甘えるように言った。
坂本加奈は彼の頬をつまんで、「ママに会いたかったの?それともママの作るご飯が食べたかったの?」
中谷陸人はにやりと笑って、「両方だよ、両方。」
坂本加奈は彼の小さな頭を撫でながら、執事に早めに用意しておいたお菓子を中谷陸人に持ってくるよう頼んだ。
中谷仁を見上げて、「陸人を連れてきてくれてありがとう。」
浩二の誕生日を、自分一人で祝うのは寂しすぎるから、彼らを招待したのだ。
中谷仁は礼儀正しく微笑んで、「私と浩二は長年の友人だから、招待されなくても来るつもりでした。」
話している間に、玄関から足音が聞こえてきた。
薄田正は酒を一本手に持って入ってきた。「お嬢さん、さすがだね。まさか浩二が誕生日を祝うことを...」
言葉が途中で、階段を降りてくる深木雫を見つけた途端、声が途切れた。
深木雫は黒のニットワンピースを着ていて、体にぴったりとフィットし、曲線美を際立たせていた。胸も腰も豊満なのに、メイクは控えめで、純粋さと色気を兼ね備えていた。
薄田正は以前二人で過ごした艶めかしい場面を思い出し、彼女の腰は命を奪うような細さだった。喉仏が動き、瞳の奥で何かが渦巻いていた。
深木雫はここに来れば必ず彼に会うことを知っていたので、特に驚くこともなく、坂本加奈に言った。「二階の飾り付けも終わったわ。他に手伝えることある?」