黒川浩二が帰ってきたら、この飾り付けを片付ける時間がないわ!
二人は震えながらドアまで歩き、インターホンの画面を見た……
画面には深木雫の顔がはっきりと映し出され、カメラに向かって手を振っていた。
坂本加奈は明らかにほっとして、「開けて、私の友達よ」と言った。
執事は大きく息を吐き、急いでドアを開けた。
深木雫は今日、黒のニットワンピースを着て、その上にキャメル色のロングコートを羽織っていた。長い髪を半分アップにして、整った顔立ちを見せ、薄化粧で、全体的な雰囲気は優しくて清楚だった。
「おはようございます。お手伝いに来ましたよ」深木雫はバッグの他に、袋も持っていた。
坂本加奈は彼女を招き入れながら、「さっきはびっくりしたわ。浩二が帰ってきたのかと思って」
「私も見つかるのが怖くて、早く来れなかったの」深木雫は袋を彼女に渡しながら、「誕生日の人に何を贈ればいいか分からなくて、スキンケアセットを持ってきたわ」
黒川浩二への誕生日プレゼントよりも、坂本加奈へのプレゼントの方が彼をより喜ばせるだろう。
坂本加奈は少し恥ずかしそうに、「手伝いに来てもらってるのに、プレゼントまで持ってきてくれて」
「フルーツバスケットとかありきたりだし、手ぶらで来るわけにもいかないでしょう。遠慮しないで」
坂本加奈はプレゼントを受け取り、メイドに2階に運ばせた。「案内しましょうか?」
飾り付けはほぼ終わっていて、まだ時間も早いので、二人は何か飲みながらおしゃべりできる。
「いいわね」
坂本加奈は彼女を2階の飾り付け、自分のアトリエ、裏庭、そして外の庭園へと案内した……
外は風が強かったので、坂本加奈は彼女を外に連れて行かず、2階のバルコニーで果汁を飲みながらおしゃべりをした。
深木雫は羨ましそうに言った。「なるほど、みんなが墨都一の観光スポットは月見荘だって言うわけね。この景色、素晴らしすぎる」
月見荘は12ヘクタールの敷地を持ち、黒川浩二は最高の設計士と建築チームを雇い、2億円を投じてプライベート庭園を建設した。
以前、ドローンで月見荘の内部の景色を撮影した人がいて、多くのネットユーザーを驚かせ、嫉妬の声が相次いだ。
さらには黒川浩二が贅沢すぎると非難する人もいて、こんな大きな庭園を無料開放しないのは資源の無駄遣いだと批判した。