第311章:私は彼を心配している

「彼の妹を奪おうとする男は、死を求めているようなものだ!!」

西村美香は、こんなに大勢の人が一度に来るとは思わなかった。瞳は暗く、唇を固く結んで黙っていた。

坂本加奈は野村渉を見るなり、すぐに尋ねた。「渉さん、手錠を外せますか?」

野村渉は頷いて、「試してみます」と答えた。

彼は黒川浩二の前に歩み寄り、ポケットからスプリングナイフを取り出し、その刃先を手錠の鍵穴に差し込んだ。

坂本加奈は野村渉の手にある刃物を緊張した眼差しで見つめ、心臓が喉まで飛び出しそうだった。

黒川浩二は彼女を見上げ、乾いて荒れた薄い唇がかすかに上がり、弱々しい声で彼女を慰めた。「大丈夫だよ、心配しないで」

坂本加奈は彼を見つめ、目に深い心痛が滲んでいた。

突然、手錠から音がして、開いた。

坂本加奈の目が輝き、声に喜びを隠しきれなかった。「開いた!」