黒川詩織が黒川グループを引き継いでから忙しくなり、詩織と過ごす時間が少なくなっていった。
坂本加奈は日常のリハビリ以外は特に何もすることがなく、よく詩織と食事をしたり、おしゃべりをしたりしていた。
詩織は自分のアトリエを整理しながら、加奈とおしゃべりをしていた。「テレビで見たんだけど、スマホにアプリを入れると他人の位置を追跡できるって本当?」
「そうよ!」詩織は彼女が興味を持っているのを見て、スマホを取り出して見せた。「私と森口花も使ってるの。彼が私にいつでも彼の居場所がわかるようにって」
「すごいね?」加奈は好奇心に満ちた瞳で彼女のスマホの赤い点を見つめた。「これが森口花のいる場所?」
詩織は頷いた。「そうよ、今は会社にいるわ」
少し間を置いて、また尋ねた。「お兄さんが外で何かあるんじゃないかって心配で、インストールしたいの?」
加奈は笑って首を振った。「違うの、私って物をよく失くすから、アプリをダウンロードして、あなたの番号と連携させようかなって」
「いいわよ!」詩織は深く考えずに同意した。
加奈は操作の仕方がわからないので、ロック解除したスマホを彼女に渡した。
詩織は彼女のスマホをいじり始めた。
加奈は少し躊躇してから、さりげなく尋ねた。「岩崎さん、最近サスペンス小説を読んだんだけど、追跡装置をアクセサリーに隠せるって本当?」
「あるにはあるけど、今はそういうものの管理が厳しくて、一般の人は手に入れられないわ」詩織はアプリをインストールしながら、顔も上げずに答えた。
加奈はさらに尋ねた。「じゃあ、あなたは手に入れられる?」
詩織は顔を上げて不思議そうな目で彼女を見た。「加奈、追跡装置で何をするつもり?」
「興味本位よ」加奈の愛らしい顔は落ち着いていて、「ただ面白いなと思って、見てみたいだけ」
「うーん...」詩織は少し考えて、「知り合いにそういうものを持っている人がいるから、後で頼んでみようか」
「後にしないで、今すぐお願い!」加奈は急いで言った。詩織が疑うのを恐れて、さらに付け加えた。「すごく気になるの!」
「わかったわ、電話して持ってきてもらうように頼むわ」詩織は彼女のスマホのアプリのインストールを終えて、自分のスマホを取り出して友人に電話をかけた。