第343話:一晩中眠れなかったの?

深木雫は本能的に彼を精神病者だと罵りたかったが、妻の不倫を見つけたかのような怒りに満ちた瞳を見て、言葉を飲み込み、冷ややかに笑った。

「そんなこと聞く必要ある?もちろん彼よ……」

言葉が終わらないうちに、薄田正は再び彼女の唇を奪った。

キスというより、噛みつきだった。

男が理性を失うのは恐ろしいことだ。まるで意識のない野獣のように、本能と直感だけで行動する。

事態は徐々に制御不能になり、深木雫が怖くないはずがなく、心は慌てと恐れでいっぱいだった。

特に男の熱い息が首筋にかかり、肌に針で刺されるような痛みを感じ、怒りと恥ずかしさが込み上げてきた。

「パチッ!」

深木雫は全身の力を振り絞って彼の束縛から逃れ、手を振り上げて思い切り平手打ちを食らわせた。

薄田正の顔は横を向き、まるで急所を突かれたかのように動かなくなった。