空気の中に火薬の匂いが漂いそうになったところで、校長が軽く咳払いをした。「それは……」
彼の言葉が始まったばかりのとき、黒川浩二は資料を持つ白い骨ばった指を緩めた。
「では高橋先生、よろしくお願いします」黒川浩二は立ち上がり、手を背中で組み、表情は冷たく温もりのかけらもなかった。
校長:「……」
これだけ?
喧嘩にならない?
高橋穂高は男の強大な圧迫感に対して少しも退くことも妥協することもなく、静かに言った。「どういたしまして、これは私の務めです」
黒川浩二は資料を渡したので、もはや留まる必要はなく、校長に挨拶をして立ち去ろうとした。
校長は熱心に見送ろうとしたが、黒川浩二に断られた。
校長はそれでもエレベーターまで見送り、高橋穂高は横で付き添った。
黒川浩二がエレベーターに乗り、扉が閉まるまで、校長はようやく大きく息を吐いた。