第351章:しろちゃんの心が砕けた

「浩二!清!黒川!」黒川美月は怒って腰に手を当てた。

「呼ばないなら食べさせないよ」黒川浩二はベッドに寄りかかり直した。

黒川美月は深いため息をつき、最後には仕方なく「お兄ちゃん!」と呼んだ。

「いい子だね!」黒川浩二は隠していたお菓子を取り出して彼女に渡した。「はい、食べなさい。そのうち太っちゃうよ!」

「そんなことないもん!」黒川美月は彼の隣にベッドに座り、お菓子を食べながら言った。「私が毎日バレエの練習でどれだけ疲れているか知らないでしょ!お兄ちゃんが羨ましい!」

「何が羨ましいの?」黒川浩二は机の上に山積みになった本を指差した。「僕の方が本を読んだり宿題をしたりすることが多いのが羨ましいの?」

黒川美月は口いっぱいにお菓子を詰め込んで、首を振り子のように振った。「それならバレエの方がいい。」

黒川浩二はベッドの頭に寄りかかって自分の飛行機の模型で遊び、黙り込んだ。

坂本加奈はベッドの端に座って兄妹を見ながら、ふと坂本真理子のことを思い出した。

浩二と美月の関係は、彼女がずっと羨ましく思っていた兄妹の関係そのもので、仲が良く、冗談を言い合ったり喧嘩をしたりしていた。

黒川美月は食べながら、突然振り向いて聞いた。「大きくなったら、何になりたい?」

黒川浩二は少し考えて、模型飛行機を彼女に渡した。「うん。」

「何?」黒川美月は彼が何を言いたいのか分からなかった。「おもちゃ屋さんになるの?」

「パイロットになる。」黒川浩二は彼女の頭を軽く叩いた。「食いしん坊のお前には分からないだろうな。」

黒川美月は口を尖らせ、模型を脇に投げた。「私はバレエが嫌い。テコンドーを習いたい。大きくなったら警察官になって、悪い人を全部捕まえたい!」

黒川浩二は彼女を白い目で見た。「この世界には悪い人がたくさんいるよ。全部捕まえられるの?」

「一人でも捕まえられればいいじゃない。」

黒川浩二はベッドから降りて脇の机に向かい、本を開きながら言った。「ママは君をお嬢様に育てようとしているのに、警察官になりたいなんて言ったら、きっと気絶するよ。」

黒川美月はベッドから降りて、彼の側に座った。「私はお姫様なんかになりたくない!警察官になりたい。それに、その時はお兄ちゃんが絶対助けてくれるでしょ!」