第363章:痛い思いをさせてごめん

「お前のお母さんが拾ってきた野良犬だよ」と坂本健司は説明した。

坂本加奈は「…………」

笑いたくなかったわけではないが、思わず「プッ」と吹き出してしまった。

たった一眠りしただけなのに、お兄ちゃんの家庭内での立場がこんなに下がってしまったなんて。

「笑うなよ」吉田美佳は彼女を睨みつけながら大股で近づいてきた。「この間、どれだけ心配したと思ってるんだ」

加奈を抱きしめようと身を屈めた。

黒川浩二は素早く彼の襟首を掴み、引き離した。

「なんだよ!」吉田美佳は振り返って彼を睨みつけ、毛を逆立てて叫んだ。「何するんだよ?」

「彼女は目覚めたばかりで、まだ体が弱っている」

「だから?」

「お前の加減を知らない抱擁に耐えられない」と黒川浩二は当然のように言った。

「くそ……」吉田美佳が反論しようとした矢先。