第370章:全部あなたのせい

坂本加奈は頬が熱くなり、彼の腰に当てていた手で思わず軽く掴んだ。「何を言っているのかわからないわ!」

彼女の力は小さく、子猫の引っ掻きのようで、黒川浩二の腰がくすぐったく、心もくすぐったかった。

「わからないのに、なぜ顔を赤らめるんだ?」低くかすれた声に笑みが混じり、少し軽薄な調子だった。

坂本加奈は恥じらいの籠もった目で彼を睨みつけ、背を向けて歩き出そうとした。「もう話さないわ。」

黒川浩二は彼女の手首を掴み、軽々と引き寄せて目の前に戻し、両手で彼女の小さな顔を包み込むと、頭を下げてピンク色の唇にキスをした。

情熱的で甘美な、極めて夢中になるようなキスだった。

最後には坂本加奈は彼に抱かれて部屋に戻り、ドアを蹴り開けて直接バスルームへと入った。

坂本加奈は彼の肩を叩きながら、一緒に入浴することを拒否した。

黒川浩二は彼女の両手を冷たい壁に押し付けて固定し、薄い唇を彼女の耳元に寄せ、魅惑的な低音で囁いた。「黒川奥様、岩崎を救ってくれたお礼に、夫として湧泉のごとく報いなければ……」

坂本加奈は一瞬固まり、理解した時には目を丸くしていた。赤い唇を噛もうとした瞬間、彼に塞がれてしまった。

この夜は言葉では言い表せないほど素晴らしいものとなった。

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翌日、坂本加奈が目を覚ましたときには既に日が高く昇っていた。喉が少し渇いていて、起き上がると枕元に水が置いてあるのが目に入り、目元に笑みが浮かんだ。手を伸ばしてコップを取ると、温度は冷たすぎず熱すぎず、ちょうど良かった。

一杯の水を飲み終えると、部屋のドアが開き、黒川浩二が家では比較的カジュアルで快適な服装をしており、全体的に生き生きとしていて、普段の近寄りがたい雰囲気は消え、温かみのある印象を醸し出していた。

「目が覚めたか」薄い唇が開き、優しい声で言うと、座るなり朝のキスをした。

坂本加奈は頷いて、「何時?」と尋ねた。

「10時だ」

坂本加奈は目を丸くした。「じゃあ、麻美さんは来てるの?」

まずい、麻美さんにきっと大寝坊だと思われちゃうQAQ

黒川浩二は頷いた。「下でコーヒーを飲んでいる。君が探している人もまだ来ていないから、急ぐ必要はない。まずは身支度を」

坂本加奈は小さく口を尖らせ、非難がましい口調で言った。「全部あなたのせいよ。休みたいって言ったのに、無理やり…」