第385章：感情を弄ぶ

黒川浩二は目の中の感情を隠し、無表情で振り向いて「何か用？」と言った。

坂本真理子は首を傾げて「薄田正が集まりを開いて、中谷仁はもう行ったよ。一緒に飲みに行かない？」

「興味ない」きっぱりと断った。

坂本真理子は目を白黒させ、大股で歩いて行き、ガラスに背中をもたせかけ、彼に向かって文句を言い始めた。

「あのさ、毎日会社に閉じこもって何してるの？今、会社中が不満を言ってるの知ってる？みんな私に聞いてくるのよ、離婚でもしたのかって。自分を虐めるのはいいけど、会社の人まで巻き込んで、一緒に残業させるなんて」

黒川浩二は彼を見ずに簡潔に答えた。「残業代は出る。嫌なら辞表を出せばいい」

坂本真理子は言葉に詰まり、手を挙げて降参した。「わかったよ、私の負けだ。でも今夜は薄田のバカが言ってきたんだ。今夜来ないと、これからブルームーンに入れてくれないって」

「それの方がいい。これからは会社の仕事に専念できる」

「くそっ！」坂本真理子は短気を抑えきれなくなった。「黒川のじいさん、お前の言ってることが人間の言葉だと思ってんのか？この悪徳資本家め、普段から我々プロレタリアートから搾取しておいて、今じゃ退社時間まで搾り取ろうとする。周扒皮だってここまで冷血じゃないぞ！」

黒川浩二は彼の罵りを聞き流し、まったく反応を示さなかった。

坂本真理子の携帯が鳴り、中谷仁からの電話だった。

「私じゃ説得できない。自分たちで言ってくれ」坂本真理子は電話に出てそう言うと、スピーカーフォンにして黒川浩二に渡した。

黒川浩二は受け取らず、視線を携帯に落とした。

「清、今夜は珍しく中谷仁が24時間育児から解放されてるんだ。早く来いよ、一緒に飲もう」携帯から薄田正の声が聞こえた。

黒川浩二は言葉を惜しむように「行かない」と言った。

「この前、西村律樹が離婚すれば安永グループに手を出さないって約束したよな」今度は中谷仁が話し、穏やかな調子でゆっくりと続けた。「今回は俺が安永グループの始末をつけて、西村律樹と西村浩介も這い上がれないほど落ちぶれた。感謝の一つもないのか？」

黒川浩二は表情を変えず、機械的な口調で「ありがとう」と言った。

中谷仁「……」