第396章:寵愛を失ったね

夜、坂本加奈と黒川浩二は入浴を済ませ、シルバーのペアパジャマを着てベッドに横たわっていた。

佐藤薫が予想したような、干し草に火がつくような激しい展開にはならず、ただ静かに抱き合って眠るだけだった。

部屋にはオレンジ色のフロアランプだけが灯され、穏やかで温かな雰囲気に包まれていた。

坂本加奈は彼の胸に顔を埋め、力強い心臓の鼓動を聞きながら、甘えるような声で「浩二」と呼んだ。

「ん?」黒川浩二は彼女の背中を優しく撫でた。

坂本加奈はもう一度「浩二...」と呼んだ。

黒川浩二は不思議そうに彼女を見下ろした。

坂本加奈は目を細め、口角を上げて「なんでもない、ただ呼びたかっただけ」と言った。

黒川浩二は心を込めて微笑み、彼女の額にキスをして「ここにいるよ」と言った。

ずっとここにいる。