第409章：私は許します

彼女の結婚式は、彼の感情の墓場でもあった。

この生涯、彼はもうこの孤独な墓から抜け出すことはできないだろう。

「抱擁が長すぎじゃない？」下の薄田正が鼻先を触りながら言った。「黒川清の顔が黒くなってきたんじゃない？」

中谷仁は目を伏せ、薄い唇を開いて言った。「余計なことを言うな。清はそんなに小心者じゃない。」

上の黒川・小心者じゃない・清は軽く咳をして二人に注意を促した。下にはたくさんの来賓が見ているのだから。

西村雄一郎は名残惜しそうに坂本加奈から手を離した。心の中の感情は既に激しく荒れ狂っていたが、表情は相変わらず動じることなく、声色さえも変わらなかった。

「じゃあ、先に失礼するよ。」

これは結局、彼女と黒川浩二の結婚式だ。そして黒川家で最も歓迎されない人物が自分なのだから。

坂本加奈は一瞬戸惑い、「お祝いの酒も飲まずに帰るの？」

彼女は特に黒川浩二に頼んで、自分の親友たちのテーブル、つまり蘭と雫姉さんのテーブルに席を用意してもらっていたのに。

西村雄一郎は横目で彼女の隣の男を見て、さりげなく言った。「お祝いの酒は遠慮しておくよ。ハネムーンから早く帰ってきてね。君の絵を待ってるから。」

結婚してもマネージャーに追い立てられる運命から逃れられないなんて、坂本加奈は無奈に深いため息をついた。「わかったわよ。」

西村雄一郎は邪悪な笑みを浮かべながら、赤い絨毯に沿って一歩一歩と立ち去っていった。

躊躇もなく、未練もなく、いつものように傲慢不遜な態度だったが、全身の殺気を抑え、日々数珠を手にしている。

得ることと失うことは、いつも同時に起こるものだ。

坂本加奈は彼の背中が見えなくなるまで見送り、腕の中のバラの花を見下ろすと、思わず微笑んだ。

黒川浩二は彼女を見下ろして言った。「そんなにバラの花が好きなの？」

「本当は来ないと思ってた。」坂本加奈は彼を見上げ、その目はホールのシャンデリアよりも輝いていた。「でも来てくれた。私たちを祝福してくれて、とても嬉しい！」

黒川浩二は長い腕で彼女の肩を抱き、再び彼女の腕の中のバラの花を見つめた。

まあいいか。

***

西村雄一郎は桜花ホテルを出た後、ホテルには戻らず精神病院へ向かった。

白川櫻の感情は以前よりもかなり安定していたが、記憶に混乱が生じ、多くのことを忘れてしまっていた。