黒川麻美は冷笑いを浮かべた。「こんな年で、その脂肪を腹筋に変えられるとでも?」
高橋穂高は思わず声を落として、彼女の耳元で囁いた。「百聞は一見にしかず」
若い女の子なら、きっとこの言葉に怯んだことだろう。でも彼女は黒川麻美だ。これまでどんな男も見てきた、遊んできた。かつて自分を裏切った男に怯むはずがない。
白い指がバスローブの紐に引っ掛かり、ほとんど力を入れる必要もなく、軽く引くだけで紐がほどけ、バスローブが開いた……
男の逞しい胸には贅肉がほとんどなく、引き締まった筋肉の線が鮮明で、オレンジ色の灯りの下で健康的でセクシーに見えた。
黒川麻美は一瞬言葉を失った。
高橋穂高は手を伸ばして彼女の首筋に触れ、薄い唇を開いた。「麻美、経験豊富な男ほど女性を喜ばせることを知っているということを、誰も教えてくれなかったのか。若造こそが一番女性のことを分かっていないんだ」
黒川麻美は赤い唇を開き、冷艶な笑みを浮かべた。「つまり、あなたは他の人よりも私を喜ばせることができるということ?」
高橋穂高の瞳の中の笑みが深まった。「証明してみようか?」
黒川麻美は彼の言葉に怯むどころか、むしろ優美な顎を上げ、女王のように命じた。「じゃあ、私をどれだけ喜ばせられるか、証明してみなさい!」
高橋穂高は今や最も忠実な将軍のようだった。主君の一声を待つだけで、甲冑を身につけて彼女のために突撃し、戦場で戦い、彼女のために生き、彼女のために死ぬ覚悟があった。
黒川麻美の唇が彼に奪われ、胸の中の酸素が少しずつ抜けていく。すでにぼんやりしていた頭は、今や真っ白になった。
おそらくアルコールのせいか、あるいは長年経っても、この男が彼女の心を開く鍵を握っていたからか、一瞬にして何年も前のあの午後に戻ったかのようだった。
若く血気盛んな二人がアトリエのカーテンの後ろに隠れて熱烈なキスを交わし、お互いの魂を吸い込んでしまいたいほどだった。
当時、愛が深ければ深いほど、後の別れは引き裂かれるような苦痛を伴った。しかし、その痛みや怒り、悔しさなど、すべての感情は時間とともに消え去り、満ち溢れていた愛情も時の灰となった。
今は大人の快楽を追求する本能だけが残っていた。
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