昼食時、黒川浩二と坂本加奈は坂本家で食事をし、食事後は月見荘に戻って荷物の整理をし、田舎での新婚旅行の準備をしていた。
坂本加奈は田舎には虫が多いと心配で、特に管理人に虫除けスプレーを多めに持ってくるように頼んだ。
黒川浩二は突然森口花から電話を受け、書斎で会社の用事を処理することになった。
坂本加奈は進んで彼の服や荷物の整理を手伝い、彼のベッドサイドの引き出しを開けると一つの瓶を見つけ、興味深そうに取り出して見てみた。
長くカールした睫毛が激しく震え、つぶやいた:「安定剤……」
この薬は彼女にとってとても馴染みがあった。以前はよく服用していたが、回復してからは一度も飲んでいない。これは自分のものではなく、つまり——
指先が空を切り、薬は誰かに取り上げられた。
坂本加奈が顔を上げると、黒川浩二の深刻な表情が目に入った。乾いた唇を噛みながら、「浩二……」
黒川浩二は目を伏せ、薬瓶を背後に隠しながら、落ち着いた声で言った。「ただの不眠症で、海野先生に処方してもらっただけだ。」
坂本加奈はしゃがんだまま、彼を見上げ、その姿勢のまましばらく動かなかった。
黒川浩二は彼女が信じていないのを見て、さらに言い添えた:「信じられないなら、海野先生に電話して、直接聞いてもいいよ。」
坂本加奈は目を伏せ、長い睫毛が目の下に薄い影を落とし、悲しみが言葉に溢れていた。
「私にはまだあなたの知らない秘密があるの。もし私が何かをとても知りたいと思ったら、夢の中で見られる確率が50パーセントあるの。」
黒川浩二は諦めたように溜息をつき、彼女の横にしゃがみ込んで、大きな手で彼女の柔らかい頬を軽く摘んだ。「君は天に愛されているというより、チートだな。これからは何も君に隠せないってことか。」
坂本加奈は目を上げ、小さな声で尋ねた:「私がパリに行ったせい?」
黒川浩二は彼女の隣に座り、淡々と言った:「それだけじゃない。以前から眠りが浅かったんだ。ここ2年は睡眠時間が少なくなったけど、海野先生の薬のおかげで何とかなっている。」
坂本加奈は彼の腕を抱き、頭を彼の肩に寄せた。「浩二、私が側にいるから、きっと良くなるわ。」
黒川浩二は彼女の頭を撫でながら、「うん、荷物は片付いた?」
彼らは結婚式を終えたばかりで、こんな暗い話題は避けたかった。