第415章:身をもって示す

坂本加奈は男の額の青筋に気づかないふりをして、笑顔で裾を持ち上げた服に包んだ桑の実を宝物のように彼に差し出した。

「浩二、浩二、見て!たくさんの桑の実を摘んできたの。すっぱくて甘くて、とても美味しいわ」

彼女は今日、足首まである長いワンピースを着ていた。裾を持ち上げて実を包んでいたため、細くまっすぐな脚が露わになっていた。雪のように白い肌には点々と染みがついており、桑の実の汁で染まった跡の他に、赤く腫れた虫刺しの跡もあった。

黒川浩二は眉間を揉みながら、怒りを抑えて先に桑の実を皿に移し、彼女を浴室に連れて行った。

シャワーを開けて、そのまま彼女に浴びせかけた。

坂本加奈は後になって気づいて尋ねた。「浩二、怒ってるの?」

黒川浩二は深く息を吸い、抑制の効いた声で言った。「自分がどんな状態か見てごらん?」

坂本加奈は自分を見下ろして、「確かに汚れちゃったけど、浩二に食べてもらいたくて桑の実を摘んできたの。食べたことないでしょう?」

黒川浩二は彼女の澄んだ誠実な瞳と目が合うと、心が柔らかくなり、怒りは瞬時に消え去った。指先で彼女の頬についた、どこで付いたのか分からない汚れを拭い取った。

「それにしても自分を汚い子猫みたいにしちゃダメだよ。手を見てごらん...」

坂本加奈の手を取ると、指先は真っ黒で、爪の間にまで汚れが入り込んでいた。温かい水で何度も洗っても落ちなかった。

坂本加奈は愛らしい笑顔を見せて、「数日で消えるわ。前に絵を描いていた時も、よく体に付いてたから」

黒川浩二は諦めたように彼女を見つめ、汚れたワンピースを脱がせて投げ捨て、まずは汚れた子猫をきちんと洗うことにした。

坂本加奈は少し恥ずかしそうに、ずっと頭を下げていた。湯気で頭がくらくらするほど熱いお湯だった。

黒川浩二の唇が彼女の雪白の肩に触れた時、思わず息が止まった。

「浩二...」彼女は子猫のように小さな声で呼んだ。

「ん?」黒川浩二はシャワーを元の位置に戻し、熱いお湯が自分の服も濡らすままにして、長い腕で彼女の肩を抱き、逃げられないように自分の胸に押し付けた。

温かい水滴が大雨のように降り注ぎ、肌に当たると、まるで火種が落ちて肌を焦がすかのようだった。

「早くお風呂を済ませましょう。まだ桑の実を食べてないでしょう」