第421章:真面目な画家

黒川浩二は低く「うん」と返事をして、少し間を置いてから「タバコを一本」と言った。

彼は以前タバコを吸っていたが、坂本加奈と一緒になってからは減らしていた。今では坂本加奈が妊娠したため、タバコとライターは直接ゴミ箱に捨てていた。

西村雄一郎は惜しむことなくタバコの箱を彼に渡した。

黒川浩二は一本取り出して火をつけ、唇に運んで慣れた様子で煙を吐き出した。骨ばった指でタバコを挟み、その姿は慵懶で憔悴していた。

二人の男は中庭の階段に腰を下ろし、一人一本のタバコを吸いながら、白い煙が静かに広がり、風に乗って消えていった。

心の奥底に秘めた思いは、依然として払拭できないままだった。

長い沈黙の後、西村雄一郎が突然口を開いた。「彼女をあなたから奪おうと考えたことがある。でも、彼女があなたのために棒を受けた時を目の当たりにして、この人生で彼女をあなたから連れ去ることは絶対にできないと悟った。」