第432章:秘密

林清美は江頭俊樹と一緒に墨都で開催される経済交流会に参加するついでに、必ず展示会に顔を出すことにしていた。

永野明と星野雫は海外のある島に数年間定住する予定で、次に会えるのがいつになるかわからないため、出発前に彼らに会いに来たのだった。

今日、黒川浩二は伽月と臨も連れてきており、みんなで順番に抱っこをした。

伽月は外交的な性格で、誰にでも懐き、どの叔父さん叔母さんも綺麗だと、蜂蜜を塗ったような甘い言葉で褒めちぎっていた。

臨は寡黙で、礼儀正しく挨拶を済ませると黒川浩二の傍に立ち、誰にも抱っこされようとしなかった。

坂本加奈は彼らと一緒に展示会を見て回り、絵を描いた時のインスピレーションや、作品に込められた寓意について堂々と語った。

展示会が終わると、黒川浩二が皆を食事に招待した。

男性陣は皆口数が少なく、時折ビジネスの話をする程度で、ほとんどの時間を隣に座る妻の世話に費やしていた。

江頭俊樹は以前重病を患い、命を落としかけたため、酒もタバコも口にせず、村上幸之助は特殊な身分のため、いつ任務が入るかわからず、酒も飲まなかった。

葉月葵は豪快な性格で、村上幸之助の代わりに黒川浩二と永野明と酒を交わした。

黒川浩二と永野明は目を合わせ、こんな女性は村上家の三男様しか娶れないだろうと密かに思った。

村上幸之助は葉月葵が酔うことを全く心配していなかった。むしろ、他の二人が彼女に酔わされることを心配していた。

なにしろ、彼の葵は千杯飲んでも酔わない帝都の酒豪なのだから!

突然、携帯が鳴った。村上幸之助のものだった。表情が僅かに変わり、簡潔に「分かりました」と答えた。

電話を切ると、葉月葵が何気ない口調で「任務?」と尋ねた。

村上幸之助は頷き、他の人もいるため詳しい情報は明かせず、「ホテルで休んでいてくれ。終わったら迎えに行く」と言った。

葉月葵は気楽に手を振って「バイバイ!」と言った。

村上幸之助は立ち上がり、申し訳ないと一言告げ、長居できないことを伝えて急いで去っていった。

彼らは皆、村上幸之助の特別な立場を理解していたため、途中退席を気にしなかった。彼らが平穏な生活を送れているのは、村上幸之助のような人々が重責を担って前進しているおかげなのだから。

食事の後、黒川浩二と坂本加奈は月見荘でくつろぐよう皆を招待した。