坂本加奈は坂本真理子を振り向いて言った。「見ただろう?これが伽月が西村雄一郎にキスして、あなたにしなかった理由よ!」
坂本真理子は鼻先を撫でながら、自分が及ばないことを認めた。
黒川浩二は階下に降りてきて彼らを見ても驚かなかったが、淡々と言った。「お風呂の準備ができたよ。入っておいで。」
坂本加奈は頷いて、「じゃあ、先に上がるわ。ゆっくり話してて。」
西村雄一郎は軽く頷いただけで、目も上げず、注意は全て伽月に向けられていた。
黒川浩二は座って、すぐに娘を抱き寄せた。
「こんな大事なものを、遊ばせちゃダメだよ。」
彼は唾液まみれの数珠を西村雄一郎に返した。
西村雄一郎はそれを受け取り、ティッシュで一つ一つの珠を丁寧に拭いた。
伽月は大好きなおもちゃを取られ、小さな唇を尖らせ、今にも涙をこぼしそうだった。