空港には、絶え間なく人々が行き交い、見送りと出迎えが続いていた。
佐藤薫は空港の出口で焦りながら待ち、あちこち見回していると、ついに懐かしく恋しかった姿を人混みの中に見つけ、嬉しさのあまり駆け出した……
「春樹!」
彼女は一気に角田春樹の胸に飛び込んだ。
角田春樹は一瞬戸惑ったが、すぐに我に返って彼女の頭を撫でた。「来なくていいって言ったのに、ホテルで待っていればよかったのに」
「そんなのダメよ!」佐藤薫は彼の腕に甘えるように抱きついて言った。「何年も帰国してなかったでしょう。墨都は今すごく変わってるのよ。私が迎えに来なきゃ」
角田春樹は笑みを浮かべた。「じゃあ、彼女に迷惑かけちゃったね」
「全然迷惑じゃないわ」佐藤薫は彼の荷物を持ちながら言った。「私も暇だったし」
角田春樹は彼女と共に空港を出て、スーツケースをトランクに入れ、助手席に座った。
佐藤薫は運転しながら尋ねた。「前は帰国しないって言ってたのに、どうして急に帰ってきたの?」
角田春樹は優しい眼差しで彼女を見つめながら答えた。「この数年、国内の発展は目覚ましく、逆に海外は停滞している。よく考えた結果、やはり国内で発展する方がいいと思った。それに——」
言葉を途切れさせ、口元の笑みを深めた。「未来の義理の両親も帰国するんだから、僕が帰って来なかったら、お嫁さんが逃げちゃうかもしれないじゃないか!」
「何よ、義理の両親って。まだプロポーズもしてないのに、誰があなたに嫁ぐって言ったの」佐藤薫は嫌みっぽく横目で彼を見た。
角田春樹は軽く笑った。「じゃあ、プロポーズさえすれば、僕と結婚してくれるってこと?」
佐藤薫の頬が赤く染まり、唇を噛んで黙り込んでしまった。
ホテルにて。
佐藤薫が角田春樹の世話を終えたところで、実家のデザインを担当しているデザイナーから電話があり、設計図を見に来て直接相談したいとのことだった。
彼女は少し躊躇して即答を避けたが、角田春樹は気前よく「行っておいで」と言った。
佐藤薫は受話器を手で覆いながら、心配そうに尋ねた。「あなたはどうするの?」
「少し休んでるよ。設計図を見終わったら、一緒に食事に行こう」
佐藤薫は少し考えて、「じゃあ、そうする」と答えた。