彼女が予約していた個室は今や満席で、最も厄介なことに主席に座っているのは坂本真理子だった。
個室のドアが開いた瞬間、坂本真理子も顔を上げて最初に佐藤薫を見たが、次の瞬間には彼女と男性が固く握り合う手に視線が引き寄せられた。
瞳の奥に素早く軽蔑の色が走った。
これが彼女の見つけた彼氏?たいしたことないじゃないか。
雰囲気は一瞬凍りつき、不思議な低気圧が全員を沈黙させた。
状況が分からない角田春樹は彼女に尋ねた。「個室を間違えたのかな?」
佐藤薫は我に返り、間違えていないと言おうとしたが、坂本真理子がなぜここにいるのかも分からなかった。
支配人が時機を得て駆けつけ、慌てて謝罪した。「申し訳ございません、佐藤お嬢様。私どもの手違いで、個室が空いているのを見て坂本様にご案内してしまい、お嬢様が既にご予約されていたとは存じませんでした。」