菊田は頷いた。「私に任せてください」
角田は彼の肩を叩いた。「ああ、君に任せるのが一番安心だ」
この食事は角田と菊田にとって満足のいくものだったが、佐藤薫はリフォームのことが気になって、ほとんど食べずに満腹になってしまった。
午後、アパートに戻ると、角田は彼女にデザイナーに電話するよう促した。
佐藤薫は携帯を取り出してデザイナーに電話をかけ、もごもごと自分の要望を伝えた。
電話の向こうのデザイナーは何が起きているのか分からず戸惑っていたが、それでも丁寧に佐藤薫に説明した。
「佐藤お嬢様、弊社は高品質な住宅を手がけており、品質を保証するため、材料は厳選しております。わずかな欠陥でも使用いたしません。もし材料の品質が気になるようでしたら、現場で直接確認していただくことも可能です」
「分かりました、でも——」佐藤薫の言葉が終わらないうちに、隣の角田が小声で注意した。
「蘭、優しすぎてはダメだよ。舐められちゃうから」
佐藤薫は角田の視線を感じながら、意を決して言った。「実は、この業界の知り合いがいまして、同じブランド、同じ型番の材料を、より安価で提供できるんです」
他の問題であれば、デザイナーは何とか解決策を見つけられたが、価格に関しては本当に手の施しようがなかった。これは会社で決められたことで、彼女には何の権限もなかった。
「そういうことでしたら、大変申し訳ありませんが、弊社では施工のみを請け負うことはできません」
「そうですか、では検討させていただきます」
佐藤薫は電話を切った。
角田は注いでおいた水を彼女に渡しながら、「どうだった?」と尋ねた。
「施工だけは請け負わないって。デザイン、施工、材料、全部一括でやるんだって」佐藤薫は肩をすくめた。安堵したのか、失望したのか、自分でも分からなかった。
「一括だって?ただのぼったくりだよ」
角田は眉をひそめ、憤慨して言った。「ダメだ、契約を解除して、利人に任せよう」
「契約解除?」佐藤薫は躊躇した。
角田は彼女の肩に両手を置き、諄々と語りかけた。「僕のバカな蘭、リフォームには色々と裏があるんだ。信頼できる人を見つけないと、必ずだまされる」
「でも……」