第454章:ありがとう

佐藤薫が再び目を覚ましたのは病院の病室だった。耳元で坂本加奈の心配そうな声が聞こえた。「蘭、やっと目が覚めたのね」

彼女は横を向くと坂本加奈の姿が目に入り、思わず涙が零れ落ちた。

坂本加奈は手を伸ばして彼女の涙を拭った。「大丈夫よ、泣かないで、泣かないで!」

高熱で喉が炎症を起こし、痛くて話すことができず、やっとの思いで声を絞り出した。「加奈...加奈...」

「ここにいるわ」坂本加奈は彼女の手をしっかりと握り、甘い声で断固として言った。「安心して、私がいるから、誰にも君を傷つけさせないわ」

佐藤薫の目に涙が溢れ、数日間燃え続けていた五臓六腑がようやく救われたかのようで、空っぽだった心にも支えができた。

醜く耐え難い恋は粉々に砕け、彼女を傷つけ尽くしたけれど、まだ加奈がいる。