第508話:あなたは彼のことが好きなの?

双葉グループと黒川グループは提携関係にあり、坂本真理子が会社に来ることも珍しくなかった。以前もよく来ていたのだ。

中谷仁は、暗い表情で入ってきた坂本真理子を見て、目に一瞬の嘲りが浮かんだ。佐藤薫に優しい声で言った。「約束したことを忘れないでね。先に帰っていいよ。」

佐藤薫は頷き、立ち上がってドアの方へ向かった。

坂本真理子の傍を通り過ぎる時、歯を食いしばるように低い声で言われた。「そんなに彼のことが心配なの?そんなに急いで!」

自分が中谷仁は大丈夫だと伝えたのに、彼女は目を輝かせて駆けつけてきた。

佐藤薫は一瞬足を止めた。彼の誤解に気付いたが、説明せずにそのまま出て行った。

坂本真理子の表情は更に悪くなり、オフィスデスクの前まで歩いて椅子に座り、足を組んで言った。「事故は俺がやった。何かあるなら俺に向けろ。彼女には手を出すな。」