第532章:森口花が浮気した!!!

夜も更け、黒川本邸の人々は全員、使用人たちも含めて就寝していた。

黒川詩織は最後のコードを打ち終え、こわばった首を動かしながら、壁に掛かった時計を横目で見た。

分針は50分を指していた。

11時50分、もうすぐ12時になる。

森口花はまだ帰ってこない。最近、彼の帰りは遅くなる一方だった。

黒川詩織はノートパソコンの電源を切り、携帯電話を手に取って彼にメッセージを送ろうとした時、外から車のエンジン音が聞こえてきた。

彼女は電動車椅子を操作して玄関に向かい、黒いマイバッハが玄関に停まるのを見つめていた。後部ドアが開くと、背の高い男性の姿が目の前に現れた。

森口花は彼女を見上げると、疲れた顔に自然と笑みが浮かび、足早に近づいてきた。

「待っていなくていいと言ったのに、早く休んでほしかったのに」

黒川詩織は彼の疲れた様子を見て、心の中のちょっとした不満も消え去り、ただ彼への思いやりだけが残った。

「午後、長く寝すぎて眠れなくて」

森口花は優しく彼女の頬をつまみ、「これからは電話して起こすよ。昼寝が長すぎると、夜眠れなくなるからよくないよ」

「私がアラームをセットするから、あなたは仕事が忙しいのに、私のことまで気にしなくていいの」

「仕事がどんなに忙しくても、君が一番大切だよ」彼は手を引っ込め、彼女の後ろに回って車椅子を押し始めた。

黒川詩織は心が甘くなり、彼に押されるままに部屋に入った。

森口花は外で一日中忙しく過ごしたため、まずシャワーを浴びる必要があった。結婚して数年が経ち、彼女の前では遠慮することもなく、上着とワイシャツを脱ぎ、上半身裸のまま浴室に入っていった。

黒川詩織は車椅子をソファの前まで進め、彼の上着を手に取り、まずポケットに何か入っていないか確認し、次に白いワイシャツを拾い上げた時、口元の笑みが突然凍りついた。

白い襟元に、明らかに栗色の長い髪の毛が一本付着していた。

彼女は自分の髪を見てみたが、栗色ではなく、彼の秘書の内田須美子は黒髪だったので、この髪の毛は明らかに内田のものでもなかった。

襟元の匂いを嗅いでみると、かすかな香水の香りがした。市場でよく見かけるような香りではなかった。

心臓が激しく鼓動を打った。

森口花は浮気をしている!!!