応接室のドアはガラス張りで、中には細身の女性が座っていた。栗色の大きなウェーブヘア、精巧なメイクをした顔は、とてもファッショナブルで美しかった。
店長が直々に彼女にネックレスを付けてあげると、彼女は鏡の中の自分を満足げに眺め、店長に何か言うと、バッグを手に取って立ち上がった。
店長は急いでドアを開け、彼女は頷いて微笑むだけで感謝の意を示し、赤いハイヒールで颯爽と歩き去った。
黒川詩織は彼女の首に掛かっているネックレスを見て、口元の笑みが凍りついた。
彼女の首のネックレスは、自分が先ほど付けていたものと全く同じだった。
女性は黒川詩織が自分を見ていることに気付かず、まっすぐに出口へ向かい、店長は最後まで付き添って見送った。
彼女がホールを通り過ぎる時、空気中に微かな香りが漂った。