第543章:「誰を好きになっても私のことは好きになれない」

森口花は彼女のことが好きだと一度も言ったことがなく、松岡菜穂のことが好きではないとも否定したことがなかった。

……

森口花は黒川詩織に病院で付き添わせたくなかったので、野村渉に彼女を連れて帰って休ませるように頼んだ。

翌日、黒川詩織は彼のことが心配で、朝早くに朝食を持って病院に見舞いに行った。

森口花は検査を終えたばかりで、検査結果を待っている間、黒川詩織に一緒に朝食を食べようと誘った。

黒川詩織は彼の膝の傷を見て眉をひそめた。「傷がまだ出血しているの?」

「さっきの検査で少し当たってしまったんだ」彼は軽く答えた。

「どうしてそんなに不注意なの」黒川詩織はベッドサイドの綿棒を取り、ゆっくりと傷口の血を拭き取った。

「もうすぐ結果が出るから、問題なければ退院するよ」