「もし私が森口花と関係を持たず、三年の期限も来ていなければ、彼はあの5%の株式を手に入れることはできなかったのね」
「はい」
だから彼は自分を連れて帰ろうとしたのだ。表向きは両親の墓参りだったが、実際は時間を引き延ばすためで、あの5%の株式を手に入れるためだった。
だからあの5%の株式を手に入れてから、やっと自分に触れる勇気が出たのだ。
黒川詩織は思わず笑みを浮かべた。その笑顔には苦みと自嘲が満ちていた。
藤沢蒼汰は彼女の悲しそうな様子を見て、心の中でため息をついた。森口花という男は複雑で深い人物だ。ビジネスの世界では如才なく立ち回れるが、誰かが彼に恋をしたら、それは不幸としか言いようがない。
「彼が欲しかったのは、この5%の株式だけじゃないでしょう」
森口花がこの株式のために自分に触れないで3年も我慢できたのなら、彼の野心はそれだけではないはずだ。