森口花は無表情で録音を聞き終え、固く結んでいた唇を少し緩め、「出て行け」という二文字を漏らした。
「花……」
松岡菜穂が口を開いた途端、彼は激しい口調で言った。「出て行けと言っているんだ」
ベッドサイドのテーブルの上の物を手で払い、床に散らばらせた。
松岡菜穂は立ち上がり、整った顔立ちには諦めの色が浮かび、病室を後にした。
森口花は録音機を強く握りしめ、激しく投げ捨てようとして腕を上げたが、空中で長い間硬直したままだった。
結局、投げることはできなかった。
彼は布団をめくり、衰弱した体でベッドから降りようとしたが——
両足がベッドに縛り付けられたかのように重く、まったく動かなかった。
漆黒の瞳に一瞬の慌てと無力さが走り、上げた手は震えていた。
拳を握り締めて膝を強く叩いたが、何の反応もなかった。
一度、また一度。
膝はまったく反応を示さなかった。
「そんなはずはない……絶対にありえない」
漆黒の瞳は血走り、感情的になって体を翻してベッドから降りようとし、重たい両足を引きずったまま激しく床に転倒した。
病室の入り口まで来ていた田中静佳がドアを開け、彼が床に倒れているのを見て、急いで駆け寄って支えようとした。「社長……」
森口花は彼女の腕を掴み、喉から絞り出すような声で言った。「俺の足が、俺の足がどうなっているんだ?」
田中静佳は彼の足を見つめ、目に暗い色が浮かび、唇を固く結んで何も言わなかった。
「言えよ!俺の足はどうなっているんだ?」森口花は声を荒げた。「一体どうなっているんだ?」
「医師の話では、怪我が重すぎて、命が助かっただけでも上出来だと。もう二度と立ち上がることはできないそうです」
田中静佳は俯いたまま、医師の言葉を一字一句そのまま伝え、彼の目を見る勇気すらなかった。
森口花は彼女の服を握っていた手をゆっくりと緩め、腕は力なく垂れ下がり、瞳孔は徐々に絶望に飲み込まれていった。
田中静佳は自分の袖の血痕に気付き、目を凝らすと、彼の傷ついた手のひらと、床に散らばったガラスの破片が目に入った。
「社長、怪我をしています」
森口花は死人のような顔をして、何の反応も示さなかった。
「お医者様、看護師さん……」田中静佳は入り口の方に向かって叫んだ。
30分後。