夫を訪ねて(2)

オフィスの一室に入ると、その豪華さから社長室かと思われたが、違った。

コード5は平らな壁に手を当てた。すぐに掌紋認証スキャナーが作動し、こう告げた。

[ようこそ、コード5様...開始まで...5...4...3...2...1...エレベーターにお入りください]

ドアが開き、コード5がエレベーターに乗り込んだが、ジェスリンが一歩踏み出す前にドアが閉まり始めた。

コード5が開閉ボタンを押すと、ドアは閉まるのを止めた。

「なんでこんなに面倒なの?彼のオフィスまでの直通エレベーターはないの?」

「ありますが、ボス専用にプログラムされています」と彼は答えた。

ジェスリンはため息をついた。夫が用心深いのは普通だけど、これは行き過ぎじゃない?

まだ彼女は「行き過ぎ」の本当の意味を知らなかった。

コード5はエレベーターの5つのボタンの中から雲のアイコンを押した。雲のアイコン、暗い煙のアイコン、赤色警報アイコン、中止アイコン、そして開閉ボタン。

雲のアイコンは間違いなく「クラウド9」を表しており、マーベリックのオフィスがある場所だ。

暗い煙のアイコンは「シャドウ9」を表しており、会社で最も危険な場所だ。

赤色警報アイコンは、その名の通り緊急時用。

そして中止アイコンは、途中で気が変わった時にエレベーターを戻すためのものだ。

ジェスリンが乗り込むと、エレベーターが少し揺れてから下降を始めた。

下降?ジェスリンは眉をひそめて考えた。「クラウド」と呼ばれているのだから、上に行くはずじゃないの?

「なぜ下に向かっているの?」と彼女は尋ねた。

「上に向かっています。脳と体が下に向かっていると錯覚するようになっているんです」

「あぁ...賢いわね」と彼女は誇らしげに微笑んだ。夫は最高!

「そう言えば、230階まであって他のエレベーターもあるのに、これは上に向かっているのにどういう意味があるの?」

「あのエレベーターは230階まで行きません。数字は最上階に着いたように見せかけているだけで、実際は228階で止まります」と彼は答えた。

この情報を知っているのはほんの一握りの人間だけだ。マーベリックは信用しないが、選ばれた者たちには必要な情報をすべて与える。ただし、それには大きな代償が伴う。