「母親に対する怒りを妹に向けるなんて弱さの表れよ。私の息子の叔父がそんな不合理な弱虫であってはいけないわ!」
マーベリックの電話からジェスリンの声が聞こえた。
レックスは驚いて、すぐに兄の方へ駆け寄り、電話を奪い取った。発信者名を確認してから、哀れっぽく話し始めた。
「義理の姉さん、みんな僕を精神的に虐めているんです!あの子は生まれた日から僕に散々ひどいことをしてきました。何度も僕を陥れようと企んで、何度も僕を困らせたんです。僕は不当な扱いを受けているんです!」と嘆いた。
「私の知っている義理の弟なら、もう仕返しをしているはずよ...パイパーもあなたから相当な仕返しを受けているはずだから、もう互角でしょう...」とジェスリンは言った。
「へへ、もちろんです。人生の教訓を教えてやらないなんて、レックスじゃありませんから」レックスは、パイパーにした仕返しを思い出して笑った。
ジェスリンは続けた。「兄弟を守る気持ちを知っている?困っている女性を救う王子様の気持ちは?知らないでしょう?」
レックスはため息をついた。この義理の姉は頭の中がお花畑すぎる。確かに、困っている女性を助けて、彼女たちの心の中でヒーローになる気持ちは知っているが、彼女の言う通り、兄弟を救ったことは一度もない。いつもマーベリックに助けられる側だった。
彼女の声が再び聞こえた。
「こうしたら?パイパーの心を掴んで、罪悪感に苛まれさせるの」
レックスの唇に笑みが浮かんだ。それはいい考えだ!なぜ自分で思いつかなかったんだろう?
自分と同じくらい憎しみ合っているパイパーを救えば、過去に自分にしたことすべてに罪悪感を感じるはずだ。さらに、彼女は自分に対して劣等感を感じるだろう。ハハハハ...そう考えた。
レックスは咳払いをした。強要されているかのように、しぶしぶ言った。「条件があります。家に来て美味しい料理を作ってくれること」
「了解」とジェスリンは応えた。
レックスは通話を終え、大声で笑い出した。そして、誇らしげに鼻を高くしたため、制服姿で入ってきた半悪魔に気付かなかった。
「いつから母さんを料理人にしたの?」
ヴァレンの声にレックスは驚いて飛び上がった。胸を押さえながら叫んだ。「心臓を止める気か?!」