ラストキス

「心配しないで、もっとひどい状況も見てきたから、信じて」フィン警部は微笑んだ。

「あの、お話ししたいことがあってお会いしたかったんです」パイパーは座り直した。

「ああ、私も話したいことがあるんだけど、先にどうぞ」

「そうなんですか?じゃあ、先にお話しください」パイパーは言った。

ベバリーは立ち上がり、バッグを手に取った。「外で待ってます」と彼女は言った。誰にも話させることなく、怒りを抑えようと必死になりながら、長い足取りでドアに向かって歩き始めた。

フィン警部とパイパーは、ベバリーが遠ざかっていく様子を見つめた。

ベバリーがドアノブに手をかけようとした瞬間、フィン警部は飛び上がるように立ち上がり、即座に宣言した。「申し訳ない、パイパー。私は間違いを犯した。君への感情は愛ではなかったと気づいたんだ―」

「分かってます」パイパーが遮った。

ベバリーはドアの前で立ち止まり、前にも後ろにも動かなかった。

「どうして分かったんだ?」フィン警部は尋ねた。

「あなたがベバリーのことを話すときの目を見ていたからです。あの日、彼女と別れると言ったとき、一瞬だけ痛みが目に浮かびました。そのとき私は、あなたが恋愛において混乱の時期を過ごしているのだと分かりました。そういうことは時々起こるものです。別れるよりも、一人になる時間を持つことで上手く対処できます。ベバリー、あなたは女性なんだから、もっとよく分かるはずよ」パイパーはため息をついた。

「あなた―」ベバリーはパイパーからフィン警部を見て、どう反応すればいいか分からなくなった。

「正直に言うと、私はあなたの男性に興味なんてなかったんです。彼が近づいてきたとき、兄たちの注目を集めるために利用しようと思って同意しただけです。それに、彼氏もいなかったので、ただ楽しもうと思っただけでした。でも今は彼氏がいて、彼は嫉妬深い人なんです。浮気していると思われたくないので、今日あなたを呼んでこのことを伝えようと思ったんです」

「確かに、君はあの二人の兄弟の妹だ―賢くて鋭い」彼はベバリーに向かって歩き始めた。彼女は彼が近づいてくるのをただ見つめていた。

「ベバリー、『軍人の彼氏』なんていないことは分かっている。もう十分僕を罰したよ。戻ってきてくれないか、君が恋しい」彼は告白した。