浮気者のレックス

「ジェスリンが上層部からどんな扱いを受けているか、見てないとでも言うの?」

「トリア姉は、フィアレスエンターテインメントで最も大きな女性アーティストで、ケイト支配人をマネージャーとして持つ権利があるのに、会社は何をしたの?新人のジェスリンに彼女を与えて―」

「違う」とトリアは遮った。「ケイト支配人がジェスリンの面倒を見ることになったのは、セレスティン先輩の意向よ。ケイト支配人はセレスティン先輩のマネージャーだったの。先輩が業界を去った時、彼女は打ちのめされていたわ。だからジェスリンは、セレスティン先輩からケイト支配人への償いなの。それを知らないとは言わせないわ」

「それはあなたが聞かされた話よ。内部の人が別の話を教えてくれたわ。ジェスリンは、セレスティン先輩を師匠にする前は平凡な才能しかなかった。ケイト支配人の助けで歌を完璧にして、今では私たち全員より上手くなってる。もし私に同じチャンスが与えられていたら、ジェスリンより上手くなれたはず!」

もう一人の友人が混乱した表情で割り込んだ。「フィービー、それは嫉妬?それともジェスリンへの憎しみ?ちょっと聞いていい?彼女が何をしたっていうの、そんなに憎むなんて?最初は、トリア姉のために彼女を追い詰めていたんじゃなかった?」

「そう、最初は、トリア姉のためにジェスリンを懲らしめようとして屈辱を味わったけど、もうそれは関係ないわ。ジェスリンは私を侮辱した。償わせてやる!」そう言って、彼女はトリアのアパートを出て行った。

フィービーが去った後、もう一人の友人は眉をさらに寄せ、ジェスリンが何をしたというのか、そんな憎しみと殺意を抱くようなことを思い出そうとした。

「忘れなさい。どんなに考えても何も見つからないわ」とトリアは言い、テーブルの上のジュースを手に取りながら、テレビに視線を移した。

もう一人の女性は首を傾げて言った。「フィービーは変わってしまったみたい」

長い間返事がなかったので、トリアを見ると、音の消えたテレビに目が釘付けになっていた。

その女性は、友人を凍りつかせたものが何なのか見ようと視線を移した。

テレビには、不快そうな表情のセレスティンを抱きしめるレックスが映っていた。

「あら、レックス若様だわ」その女性は茶目っ気たっぷりに微笑んだ。「嫉妬してるの?あなたは―」