佐藤大輝一行は佐藤家に戻った。
車から降りると、佐藤大輝はまず海浜市に連絡するよう部下に指示し、佐藤家と沢井家の間に不和はないこと、林円佳が出した命令を撤回することを伝えさせた。
佐藤さんは息子のこの細やかな配慮に感心した。
その後、一行は足早に屋内に入り、階段を上った。
出発時には佐藤翔太の容態が安定していることを確認し、その後の電話でも元気に飛び回っているという報告を受けていたが、やはり心配だった。
階上に着くと、部下が佐藤大輝を止めた。「林さんは病院に搬送され、林家の人々が引き取って看病しています。私も密かに林さんのDNAサンプルを採取しました。あとは少年のサンプルと照合するだけです…」
佐藤大輝の眼差しが一層深くなった。「すぐに実行せよ」
「はい」
部下が返事を終えたその時、部屋から佐藤さんの驚きの声が聞こえた。佐藤大輝が急いで部屋に入ると、佐藤さんが叫んでいた。「翔太が家出したわ!」
ベッドには誰もおらず、傍らの乳母と使用人たちは震えながら説明していた。「坊ちゃまは泣き疲れて、ゆっくり休みたいと仰って、私たちを部屋から出されました…邪魔をしないでほしいとも…まさかこんなことになるとは!」
佐藤大輝は責任追及する暇もなく、大股でベッドサイドテーブルに向かった。そこにはメモが置かれていた。【おばあちゃん、きれいなお姉さんを探しに行きました】
佐藤さんは驚いて叫んだ。「あの子は沢井恭子の住所なんて知らないはず!すぐに監視カメラを確認して、どうやって出て行ったのか調べなさい!」
すぐに監視カメラの映像から、30分前に佐藤翔太がこっそりと抜け出した様子が判明した。
彼は全ての人の目を避けて階下に降り、賢く佐藤家の仕入れトラックに潜り込んでいた。
佐藤家は大きな屋敷で使用人も多く、毎日の食事の準備は大仕事だった。このトラックは厨房が野菜の仕入れに使用するものだった。
佐藤大輝は冷静に命じた。「運転手に連絡を」
2分後、佐藤大輝はトラックの録画映像を見た。トラックは佐藤家を出てから市場に向かい、市場は混雑しており、監視カメラの設置場所も少なかった。
しかし、トラックが魚市場で仕入れのために停車した時、佐藤翔太が車から降りる様子が映っていた。小さな体で周りを見回した後、監視カメラのない路地に消えていった。