木下毅は頷いた。「そうだ」
彼は眉をひそめ、非常に不思議そうに言った。「記憶の混乱なんて精神病患者にしか起こらないことだ。君自身が名医なのに、若いのにどうしていつも自分を疑うんだ?」
その一言で目が覚めた。
沢井恭子は伏せていた目を少し上げ、「おっしゃる通りです。私の考え違いでした」
彼女の記憶に問題があるはずがない。
佐藤大輝も自分には問題がないと言っている。
ということは、問題があるのは出来事そのものだ。
二人とも学校に行って、写真を撮った。その中には必ず何か別のつながりや理由があるはずだ。真相を調べもせずに、ここに来て何をしているのだろう。
彼女は立ち上がり、細い体を真っ直ぐに伸ばした。「木下叔父さん、お時間を取らせてすみませんでした」
木下緑子の診察室を出て、沢井恭子はバイクに乗り、佐藤翔太を乗せて佐藤家へ向かった。