山崎夏枝が入ってきた瞬間、白い服を着た沢井恭子の姿が目に入った。
白い羽と相まって、まるで仙人のような雰囲気を醸し出していた!
山崎夏枝はすぐに気に入り、白井桜子に強引に尋ねさせた。
沢井恭子は目を細め、淡々とした口調で「嫌です」と答えた。
白井桜子も自分の提案が無理だったと感じたようで、涙を浮かべながら、まるで子供のような200キロの太った体で「はい、わかりました」と言った。
彼女が急いで立ち去ると、沢井恭子は山崎夏枝の怒りの声を聞いた。「新人のくせに、ルールも分からないの?」
沢井恭子が何か言おうとした時、景山誠が彼女の声に気づき、信じられない様子で「橘さん?」と尋ねた。
「うん」
沢井恭子は座ってから退屈になり、携帯を取り出すと木下緑子からLINEが来ていた:【今夜、五十嵐さんの手術があるの忘れないでね~】
沢井恭子は【はい】と返信した。
メッセージを送った後、沢井千惠がやってきた:「みんなに話しておいたわ。あなたが最初に出演するのよ!上手く歌えるかどうかは別として、とりあえず場を温めましょう!」
景山誠も笑って言った:「仮面歌手の一日体験か、橘さんの引退生活も悪くないね!」
沢井恭子:「……」
すぐに収録の時間となった。
予想通り最初の出演者となり、沢井恭子がステージに上がると、審査員席に目をやった。すると4人の審査員の中に見覚えのある人物がいた:小谷千秋だ。
「白井さん、自己紹介をお願いできますか?」司会者が尋ねた:「俳優さんですか?それとも歌手さんですか?」
沢井恭子は淡々と答えた:「どちらでもありません」
マスクの中には声質変換器が仕込まれており、電子音声で話すようになっていた。
沢井恭子の言葉を聞いた小谷千秋は、すぐに彼女に注目した。白井和敏のクールな雰囲気と、先ほどの話し方が細川奈々未に似ているように感じた。
彼女が考えを巡らせている間に、司会者が笑顔で言った:「では、白井さんの演奏をお願いします!」
沢井恭子はピアノの前に座り、『蘭陵王入陣曲』を演奏し始めた。
歌番組なので、古詩を添えた。
「烈馬、長槍、鉄面
鎧、マント、剣の心
……
一声の雄叫び、一騎当千
敵軍万重を恐れず
鉄蹄は邙山を踏み砕く
……
百錬の鋼も指に巻けば柔らかく
誰が家の娘か
一枚の手紙に込められた清らかな想い