部屋にいる全員が一斉に振り向いた。
山村治郎は驚いて言った。「名医?」
藤原夏美は傍らで彼女を観察していた。
沢井恭子は簡易手術着を着て、手術帽を被り、マスクと眼鏡も全て装着していた。全身が覆われており、顔立ちが見えず、一瞬男女の区別もつかないほどだった。
木下緑子が口を開いた。「関係者以外は退出してください。手術中はこんなに大勢いては困ります。」
藤原夏美は残って何か言いたそうだった。「名医様、私もお手伝いさせていただけませんか!」
沢井恭子が答える前に、木下緑子が愛想よく言った。「結構です。こんな些細なことで藤原先生を煩わせる必要はありません。私がいれば十分です。ただの小手術ですから。」
藤原夏美は俯いた。「そうですね。名医様の手術は誰でも見学できるものではありませんから。外で待っています。」