第107章 正体を現す!顔面打撃!

部屋にいる全員が一斉に振り向いた。

山村治郎は驚いて言った。「名医?」

藤原夏美は傍らで彼女を観察していた。

沢井恭子は簡易手術着を着て、手術帽を被り、マスクと眼鏡も全て装着していた。全身が覆われており、顔立ちが見えず、一瞬男女の区別もつかないほどだった。

木下緑子が口を開いた。「関係者以外は退出してください。手術中はこんなに大勢いては困ります。」

藤原夏美は残って何か言いたそうだった。「名医様、私もお手伝いさせていただけませんか!」

沢井恭子が答える前に、木下緑子が愛想よく言った。「結構です。こんな些細なことで藤原先生を煩わせる必要はありません。私がいれば十分です。ただの小手術ですから。」

藤原夏美は俯いた。「そうですね。名医様の手術は誰でも見学できるものではありませんから。外で待っています。」

五十嵐奥さんは少し躊躇してから立ち上がり、外へ向かった。

病室のドアが閉められ、沢井恭子は木下緑子に目配せした。木下緑子は歩み寄り、ドアの窓のカーテンを引いて、外からの視線を完全に遮断した。

沢井恭子は携帯を取り出した。

木下緑子は尋ねた。「景山さん、何をするんですか?」

沢井恭子は答えた。「部屋に監視カメラがないか確認します。」

「そんなに慎重なんですか?」木下緑子は驚いて言った。

沢井恭子は詳しい説明はせず、部屋に監視カメラがないことを確認してから、ようやくベッドに横たわる五十嵐正弘に目を向けた。彼はすでに麻酔を打たれて眠っていた。

沢井恭子は持参した箱を取り出し、開けると中には一列に並んだ光り輝く銀針があった。

彼女は木下緑子に頷いた。

木下緑子は脇に移動し、すでに用意していた血液を五十嵐正弘の体内に注入し始め、もう一方では排出を行った。

五十嵐正弘は血液の病気を患っており、輸血による治療が必要だった。

もちろん、輸血だけでは不可能だった……

輸血の過程で、沢井恭子は銀針を持ち上げ、次々と彼の体に刺していった。一本一本の針について、最適な深さを見つけるまで何度も揉みほぐしながら施術を続けた。

これは彼女の体力にも精神力にも、大きな試練となった。

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ドアの外では。

佐藤さんが五十嵐奥さんに付き添っていた。

山村治郎と藤原夏美が並んで立ち、四人とも手術室の中を覗き込むように見つめていた。