第124章 山崎夏枝は完全に終わった!

沢井恭子は白井桜子をじっと見つめていた。

彼女は白井桜子の心理診断を行ったばかりで、彼女の精神疾患が今どれほど深刻か分かっていた。刺激を受けたばかりで、最も脆弱な時期だった。

群衆はおろか、楽屋で3人以上の人がいるだけでパニックになってしまう。

木下毅も言っていた。この病気は少なくとも痩せて自信を取り戻してから治療すべきで、今は介入できない。そうでないとさらに悪化してしまうと。

しかし、そんな白井桜子が、臆病で無力な白井桜子が、6年間もPUAされ続けた白井桜子が、今この瞬間、彼女のために立ち上がった。

彼女には白井桜子の全身が微かに震えているのが見えた。

客席を見ようとして見れない、必死に床を見つめる慌てた怯えた眼差しが見えた。

沢井恭子は思わず拳を握りしめた。

客席の佐藤澄夫も呆然としていた。

彼は信じられない様子で白井桜子を見つめていた。

これが初めて山崎夏枝のライブを聴く機会だった。

パソコンで聴くのとは違う、この立体的なサラウンドサウンドは、かつての声と徐々に融合していった。

あまりにも似ていた。

この歌声は完全に当時の声そのものだった。

佐藤澄夫も呆然としていた。

そして山崎夏枝と沢井恭子の争いを目にした。

沢井恭子は仮面をつけて審査員席に座っていたが、佐藤澄夫は楽屋で彼女を見かけた時、同じ白いドレスを着て羽根の仮面を持っていたので、白井和敏が沢井恭子だと分かっていた。

佐藤澄夫は非常に悩んでいた。

追いかけている人と未来の義姉が対立している、どちらの味方をすべきか?

そこで、佐藤澄夫は携帯を取り出し、現場を録画して佐藤大輝に送り、さらにメッセージを添えた:【兄さん、彼女と義姉、どっちを選ぶ?】

そして舞台上の争いを見続けた。

そしてその後!

白井桜子が舞台に上がり、マイクを持って歌い始めるのを見た。

先ほどの声とまったく同じ声だった!

佐藤澄夫は驚いて呆然とし、信じられない様子で高台を見つめ、また山崎夏枝を見て、会場の観客やスクリーンの前の視聴者たちと同様に、みな呆然としていた。

一瞬何が起こっているのか分からなくなった!

山崎夏枝も呆然としていた。

客席の山崎武弘も立ち尽くしていた。